--- title: "GitHub のコードは勝手に使っていい? LICENSE が無いときの答え" description: "GitHub で公開されているコードは、LICENSE ファイルが無ければ自由に使えるとは限りません。公開は「見せる」であって「使っていい」ではない。LICENSE が無いライブラリを見つけてから、作者に聞き、代替に差し替え、配る前に確認するまでの手順。" url: https://ryuuneko.com/blog/github-code-license-can-i-use published: 2026-09-12 20:46:41.92526 updated: 2026-09-12 20:47:36.757366 --- 「GitHub で公開されているんだから、コピーして使っていいよね?」 そうとは限りません。コードは書いた時点で作者に権利があり、公開は「見せる」であって「使っていい」ではない。使っていいかどうかは、リポジトリの LICENSE に作者が書いた許可で決まります。LICENSE が無ければ、複製・配布・改変の許可が出ていない状態が既定です。 この記事は、公開前によく踏む場面を小さなツールで再現した記録です。ライブラリ名や作者とのやり取りは架空ですが、根拠にしたものは GitHub のドキュメントと規約、日本の著作権法、MIT ライセンスの本文で、末尾にまとめてあります。 ![書く → 公開 → LICENSE → 確認。公開は「見せる」まで。使っていいかは LICENSE で別に出る、という流れの図](/blog/uploads/github-code-license-can-i-use-overview.svg) --- ## 依存の一覧に UNKNOWN が 1 つ残っていた [前の記事](/blog/ai-app-in-10-minutes-then-what)で、README に「使ってください」とあるだけの空行整形ライブラリを、公開前に外しました。今回はそれを、本当に使っていいのか確かめるところからです。 いきなり GitHub を開く前に、手元の情報だけで分かるか試しました。配る前に、入れたものの利用条件を一覧で出す道具があります。 ``` $ npx license-checker --summary ├─ MIT: 41 ├─ Apache-2.0: 6 └─ UNKNOWN: 1 (blankline-utils@1.0.3) ``` (数字は題材用。出力の体裁も要約です) 他は全部たどれているのに、1 つだけ UNKNOWN。名前は出ているのに、条件だけ分からない。 もう 1 段掘ります。npm に上がっているパッケージなら、package.json の license 欄を 1 行で見られます。 ``` $ npm view blankline-utils license (何も出ない) ``` license 欄が空だと、値は表示されません。念のためパッケージの中の package.json を直接開くと、名前と版はあるのに、license の項目ごと無い。npm に上がっていることと、使う許可が出ていることは別でした。 --- ## リポジトリを見ても LICENSE が無い GitHub のほうを開きます。 ``` author / blankline-utils src/ 中身 README.md 「便利なので使ってください」 package.json license の項目が無い LICENSE 見当たらない ``` README には確かに「使ってください」とある。でも LICENSE ファイルが無い。この一文だけでは、改変していいのか、アプリと一緒に配っていいのかが分かりません。 見えるし、ダウンロードもできる。でも、それだけで何に使ってもいいとはならない。ここがこの記事の答えです。 **公開されているだけでは、自由に使えるとは限らない。** GitHub 上で見たり fork したりできることと、自分のアプリへ組み込んで再配布できることは、別の話です。動作確認と利用条件の確認は、別の仕事でした。 --- ## LICENSE が無いと、どうなるのか 根拠を順に並べます。 - **書いた時点で権利が付く。** 日本の著作権法では、権利を持つのに届け出も表示も要りません(著作権法 17 条 2 項、出典 4) - **LICENSE が無ければ、既定の著作権法が適用される。** GitHub のドキュメントは、作者がすべての権利を持ったままで、誰も複製・配布・派生物の作成ができない、と書いています(出典 1) - **GitHub の規約が許しているのは「サービス上で」見る・fork すること。** 公開リポジトリにすると、他の利用者に対して、GitHub の機能の範囲で表示・複製(fork)する許諾を与えます(利用規約 D.5、出典 2)。fork ボタンが押せるのはこの範囲で、自分のアプリに入れて配る許可は別です だから、LICENSE が無いなら「勝手に MIT ということにする」も無理です。それは作者が決めることだからです。 ![LICENSE の有無を確かめる 3 つの場所。npm view の license 欄、リポジトリの LICENSE ファイル、LICENSE 本文。無ければ作者に聞くか別を探す、の図](/blog/uploads/github-code-license-can-i-use-three-places.svg) --- ## 作者に聞く。待つ間は、別の候補を探す 作者に Issue で頼む手があります。 ``` Issue #12 Could you add a LICENSE file? I'd like to use this package in my app. Please choose whichever license you prefer. ``` 短くていい。何に使いたいかと、LICENSE を追加できるか。「MIT か Apache がいい」と希望を入れてもいいけれど、決めるのは作者です。相手の持ちものなので、選ぶのは向こう。 送ったら、そのライブラリは使わない状態にして、代わりも探しておきます。返事を待つ時間と、作業する時間は分けていい。 ``` 1日目 LICENSE を追加できるか質問した 3日目 返事なし。代わりの候補を探す 5日目 返事なし。候補を動かして確かめる 1週間 返事なし。代わりへ切り替える ``` これは架空の経過です。返事を待つ期限に決まりはありません。付けてくれることもあるし、返事が来ないこともある。今回は友達へ渡す予定があったので、1 週間で切り替えました。作者を責める話ではなく、自分の側で期限を決めるだけです。聞いたこと自体は無駄になりません。気づいて追加してくれることもあるし、付けば次に使う人も確認できます。 --- ## 代わりを見つけたら、LICENSE の本文まで開く 同じことをする候補が見つかりました。 ``` other / neat-lines src/ 中身 README.md 使い方 LICENSE MIT と書いてある package.json license: MIT ``` 今度は LICENSE がある。ただ、名前だけ見て終わりにしない。条件は本文に書いてあって、名前は目次のようなものです。 ``` MIT License Copyright (c) 2025 other Permission is hereby granted, free of charge, ... The above copyright notice and this permission notice shall be included in all copies ... ``` MIT の条件は、上の著作権表示とこの許諾文を、コピーに残すこと。それだけです(出典 5)。残せば、改変してアプリに入れてもいい。 「MIT なら表示だけ」で済むのは MIT の話で、他のライセンスにそのまま当てはめてはいけません。この先は [MIT ライセンスなのにソース非公開?](/blog/mit-license-closed-source) で扱っています。 --- ## 差し替えて、表示を残して、もう一度一覧 入れ替えたら、動きを先に確かめます。テストが通って、出力も前と同じ。 次に表示のほう。配布物と一緒に届く形で、著作権表示と許諾文を残します。 ``` tidy-text/ src/ README.md THIRD_PARTY_NOTICES.md ← 足した neat-lines — MIT Copyright (c) 2025 other ``` ファイル名は慣習です。元のパッケージの中に LICENSE があっても、ビルド後には残らないことがあるので、配るものと一緒に届く形にしておきます。 最後に、最初の一覧をもう一回。 ``` $ npx license-checker --summary MIT: 42 Apache-2.0: 6 UNKNOWN: 0 ``` UNKNOWN が消えました。ただしこれは、一覧で名前を確認しただけです。見慣れないものは本文も見る。全部読む必要はなくて、まず一覧で絞って、引っかかったものだけ開けばいい。 --- ## 入れる前に 1 行。開くのはタダ 今回の手間は、入れる前に分かっていれば要らなかったものです。 ``` $ npm view neat-lines license MIT ``` これを、入れる前の確認にします。 1. **入れる前に、license 欄と LICENSE 本文を確認する。** 何も出なければ GitHub を見る 2. **LICENSE が無ければ、作者に聞くか、別の候補を探す。** 待つ間に手は動かせる 3. **条件を守り、配る前に依存の一覧をもう一度見る。** 入口と出口で確認する 「使ってください」の一文があっても、LICENSE を見る。見えるのと使えるのは別。判断の材料は作者が出す。それを開くかどうかは、使う側に残っています。 --- ※ GitHub の規約とドキュメントの扱いは 2026 年 8 月時点で確認したものです。ライブラリ名(blankline-utils、neat-lines)と作者とのやり取りは架空で、`license-checker` は実在のツールですが出力の数字と体裁は要約です。法律・規約は概要の説明なので、判断は各ライセンス本文と公式ドキュメントで確認してください。 ## 動画版 同じ題材を、YouTube「黒猫開発部」では 2 人の会話で扱っています。動画は 2026-09-18 公開予定です。 - [チャンネル: 黒猫開発部](https://www.youtube.com/@黒猫開発部) ## 出典 1. [GitHub Docs — Licensing a repository](https://docs.github.com/en/repositories/managing-your-repositorys-settings-and-features/customizing-your-repository/licensing-a-repository) — "without a license, the default copyright laws apply, meaning that you retain all rights to your source code and no one may reproduce, distribute, or create derivative works from your work." 2. [GitHub Terms of Service — D.5 License Grant to Other Users](https://docs.github.com/en/site-policy/github-terms/github-terms-of-service) — "By making a repository public, you grant other Users a nonexclusive, worldwide license to use, display, perform and reproduce (by forking) Your Content through the Service as permitted by GitHub's functionality." 3. [choosealicense.com — No License](https://choosealicense.com/no-permission/) — "the work is under exclusive copyright by default" / "nobody else can copy, distribute, or modify your work" 4. [e-Gov 法令検索 — 著作権法 第 17 条第 2 項](https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048) — 「著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。」 5. [Open Source Initiative — The MIT License](https://opensource.org/license/mit) — "The above copyright notice and this permission notice shall be included in all copies or substantial portions of the Software."